市場の動揺を抑えるために楽観論を示してきた政府も、8月23日、ついに下記のような経済救済政策パッケージを打ち出すに至った。
(1) 経常収支改善とルピア防衛
・30%以上の製品を輸出する労働集約工業・資本集約工業に対する減税措置
・バイオディーゼル活用で燃料輸入削減
・完成車など奢侈品への輸入関税引き上げ(75%→125%)
(2) 経済成長維持のため、対GDP比財政赤字を2.38%に抑える
・労働集約工業への税の減免を含む投資インセンティブを供与
・保税措置の緩和
・輸入書籍への付加価値税廃止
・奢侈品に含まれない製品への奢侈品販売税の撤廃
・州最低賃金の調整
・研究開発促進のためのインセンティブ
(3) 価格安定化とインフレ抑制
・牛肉や野菜・果物の輸入管理をクォータから価格ベースへ変更
(4) 投資促進
・投資手続の簡素化
・より投資家を利する投資ネガティブリストの発布の迅速化
・タックスホリデーや税減免を含む投資プログラムの迅速化(アグロ、オイルパーム、カカオ、ラタン、金属、ボーキサイト、銅など)
・ 既存投資の迅速化(発電、石油ガス、鉱産物、インフラなど)
輸出促進、投資許可手続き簡素化、など、どこかで聞いたことのあるフレーズだなと思い出したのは、1980年代半ばから1990年代半ばにかけての非石油製品輸出振興戦略である。実はあのときもまた、国際収支の悪化(とくに経常収支赤字)、高い消費者物価上昇率(年10%前後)、ルピア切り下げがあり、石油ガスに依存した経済の構造改善に取り組んでいた。
他方、2000年代は、経常収支黒字、相対的に低い消費者物価上昇率、強含みのルピアという状況が昨年前半まで続いてきた。「インドネシアの国際収支は基本的に黒字基調」という認識もメディアなどに見られたが、25年以上インドネシアを見てきた経験からすると、むしろ2000年代の状況のほうが異質な状況に見える。
すなわち、石油ガスの比重は落ちたものの、今のインドネシアが直面するマクロ経済の難しい状況は、本来的に、過去にずっとインドネシアが政策上の課題、とくに構造改善を求められてきた状況にむしろ似ているからである。
過去には、それは世銀やIMFの指導のもとで構造改善政策が採られた。あのとき、スハルト政権下で何度も政策パッケージが出されたものである。今は、世銀やIMFからの圧力はなく、自らが構造改善を進めていかなければならない。
インドネシア経済の成長へのネックと考えられているインフラ未整備、人的資源開発の不足、官僚制と許認可手続きの煩雑さ、いずれも1980~1990年代に問題として指摘された項目であり、今もなお、その改善は途上にある。
今後、経済救済政策パッケージの個々の政策の中身がどのように実施されていくか、注意深くウォッチしていきたい。
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