2013年7月19日金曜日

長所は「人の言うことをきくこと」という若者たち

7月初め、日本の某大学の先生がスラバヤを訪れ、私に話を聞きたいといってきた。その先生によると、最近の若い世代は日本の外へ出ていこうとしない傾向が顕著で、海外で働いている人の話を伝えることで、彼らの意識を変えたい、というのがインタビューの趣旨だった。

私の生き方が果たして若い世代の参考になるのだろうか。世間から見れば、40代で安定した職場を辞め、その時々の幸運に助けられながら、裕福さとも、安定とも、名誉ある地位とも無関係な生き方を選択してしまった私の話など、彼らは果たして聞くのだろうか。

その先生曰く、学生と面接をしていて、彼らに自分の長所を尋ねた際、「言うことをきく」「言われたとおりにできる」「規則に従う」ということを自分の優れている点として答えた者が多かった、という。

時代は変わったのだろうか。大学生は学問するために大学へ来た、そこで求められるのは批判的思考だ、と私はずっと思ってきた。自分で考えるということを鍛えはじめる場が大学だと思っていた。今、日本の大学で作り出される人材は、人の言うことを(批判的に考えることなく)そのままその通りにできる、ということを自分の長所という人材なのか。にわかには信じがたい。いや、信じたくない。

「人の言うことをきく」ということを、冗談や受けを狙ったり、皮肉を込めたりして言うのではなく、真顔で本当に自分の長所と思っているなら、あたかも、自分から積極的に人間をやめようとしているかのように思えてしまう。

しかし、その状況は学生らだけに帰せられるものなのだろうか。

大学の教師は、学問や研究の中身ではなく、自分の学生の就職率で評価される傾向があると聞く。少子化で経営が最重視されるようになった大学にとって、お客さんである学生に来てもらわないことには話が始まらないのだ。

学生の親は、親心として、子供に苦労を掛けさせたくない。できるだけ冒険せずに、楽にそこそこ安定した人生を歩んでいってもらいたい。大学へやるのは世間体もあり、大学ぐらいは出ておいてもらいたい、ということか。

研究という本分を重視してもらえない教師。自分が安心したいがために子供の将来を案ずる親。

本来ならば、大学では、経営者がしっかり経営して、教師にはじっくり研究に集中してもらえる環境を作るべきではないか。

本来ならば、子供には自分で自分の将来を切り開いていく力をつけて託し、何かあった時に支えになってあげるのが親の役目ではないか。

学生が外に目を向けないのは、学生だけの問題ではない。教師、親、すべてが絡んで、外に目を向けさせることを誰も望んでいない環境が作られてしまったのではないか。

今の日本の閉鎖的な状況を作り出している素の一つがここにある。「人の言うことをきく」、批判的な目を持たずに育ってきた次の世代がまもなく将来の日本を形成していく。自分の頭で考えることをよしとしない人間を作り続ける社会の将来が怖い。

「こうなったのは、しかたないんだ。従うしかないんだ」。

そんな世の中ではない。もっと、前向きの明るい世の中を創っていかなければならない。

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