3月17日の日曜日、南ジャカルタ・マンパン地区の知り合いの家を家庭訪問した。一通りいろいろ話を聞いた後、ふと軒先を見ると、つり下げられたプラスチックのカップに米が少し入っていた。
「これは何か」と知り合いに聞くと、ジンピタン(jimpitan)だという。この町内会では、各家の軒先に米を入れるカップがつり下げられている。この米は集められてお金に換えられる。当初は、町内会の警備・夜警をする人向けに想定されたものである。すなわち、警備や夜警をしてくれる人は昼間は肉体労働で働いており、その労をねぎらう意味で、お米を分けたり、お米を売って換えたお金を使ってもらったりするように考えられていた。
しかし、傍目にはコミュニティの雰囲気で満ちあふれているこの町内会でも、そういった人々による警備や夜警が機能しなくなっていた。やむを得ず、町内会の男たちが当番で警備や夜警をすることになる。彼らは、警備や夜警をするときに、軒先につり下げられた米を回収して歩く。だから、軒先にまだ米が残っているということは、当番の住民が警備や夜警をしなかったことを意味する。
各家庭から出される米は1日にスプーンで2さじ、それでも町内会全体だと1日に2キロぐらいになる。すなわち、1ヵ月で約60キロの米が集められる。1キロ当たりの米の値段は約7000ルピアなので、約42万ルピアの資金ができる。これらの一部は町内会の貧しい家庭に配られ、残りは街灯を直したり、警備用の詰め所をきれいにしたり、緑化活動に使ったりしている。
さすが、伝統的コミュニティの知恵だな、と少し感心していると、どうもそうではないことが分かった。このジンピタンを考案したのは私の知り合いで、3ヵ月ぐらい前から始めたということである。ほかの町内会ではやっていないそうだ。そういえば、10ヵ月前にここを訪れたときには、ジンピタンはなかったような気がする。
各家庭で1日にスプーン2さじの米なら、さほど大きな負担ではないだろう。お金ではなく米を使って町内会の活動用のささやかな資金を生み出しているのである。
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