インドネシアの消費市場の活況の一面は、耐久消費財、とくに家電製品の販売の好調さからみることができる。なかでも、テレビがその主役を担い、電気が通っているところはほぼ100%の家庭にテレビがあるといってもよい状況になっている。
インドネシア電機事業者連合(Gabungan Pengusaha Elektronik: Gabel)によると、2012年の家電販売額は前年比18%増の28.9兆ルピアであった。2013年は2012年よりも15%増を目標としている。増加率はやや低下すると見込んでいる。
2013年1〜2月の家電販売額は前年同期比14%増の5.06兆ルピア。最も販売額の大きいのは依然としてテレビ(9,394億ルピア)だが、前年同期比5.5%増に留まっている。他方、増加率の高いのは、エアコン、冷蔵庫、洗濯機で、この3つを合わせると前年同期比25%増、9,200億ルピアとなっている。
今年に入って、家電価格が約5%上昇したが、これは通貨ルピアの対米ドル為替レートが軟化している影響と見られる。
2013年2月の主な家電販売額は以下の通りである(カッコ内は2012年2月)。
・テレビ:9,394.34億ルピア(8,998.56億ルピア)
・DVDプレーヤー:542.05億ルピア(673.5億ルピア)
・オーディオ:152.79億ルピア(160.32億ルピア)
・冷蔵庫:4,682億ルピア(3,832.03億ルピア)
・エアコン:3,722.46億ルピア(3,015.22億ルピア)
・洗濯機:3,081.82億ルピア(2,365.66億ルピア)
DVDプレーヤーやオーディオの販売額減少は、スマホや携帯機器の普及拡大の影響と考えられる。今では誰でも気軽に動画を携帯電話で見る時代となった。テレビも一家に一台の時代は終わり始めている。インドネシアが豊かになるにつれて、みんなで観る時代から個人で観る時代へ、変化し始めているのかもしれない。
テレビは今も家電の王者で、一日中付けっぱなしの家庭も珍しくない。最近驚くのは、ジャカルタなど都市部の中低所得層の家々にも薄型テレビが普及し始めていることである。さすがに地方の農村などではまだまだだが、見栄を張りたがるインドネシア人の一般的な性向が需要拡大に貢献しているとみられる。
冷蔵庫や洗濯機の普及は、インドネシアでも都市部を中心に核家族化が進み始めていることの表れであろう。たしかに、食事の用意や洗濯をしてくれるメイドの需要が少なくなっているようにみえる。もっとも、メイドたちも、一度洗濯機の便利さを分かってしまうと、もう腰をかがめての手洗いへは戻りたくないだろう。私の前に使っていたお手伝いもそう言っていた。
冷蔵庫の普及は、必ずしも核家族が自前で調理する傾向が増えたことを意味しないと思う。 なぜなら、彼らの多くは自分で調理する環境で育っていないからである。ジャカルタなどの都市部では、日本以上に、出来合いや調理済み製品の需要が大きいと思われる。主な食堂やレストランでは、持ち帰りが可能であり、それを利用して食事を済ませる傾向も以前から根強い。食品加工業やケータリング・サービス(宅配)は今後の伸びが期待できる業種である。
いずれにせよ、家電販売はまだ好調を維持してはいるが、経済発展に伴うとくに都市でのライフスタイルの変化が、家電販売の中身に影響を与え始めていることに注目する必要がある。
(上記データは、2013年4月5日付のBisnis Indonesiaから引用した)
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